仮想現実(VR):テクノロジーの次の破壊者
自宅のリビングルームでくつろいだまま、携帯電話を使って、次に買う車を試乗することを想像してみてください。一般に仮想現実(VR)というとテレビゲームのことを考えがちですが、自動車業界を含む多くの産業にとって、仮想現実はこの30年における最も破壊的なテクノロジーとなるでしょう。

こう話すのは、GLGの専門家で、Facebook傘下のOculus社の元出版責任者だったDavid De Martini氏です。先日、ロサンゼルス・オートショーのコネクティッド・カー・エキスポで、私はDavidと自動車のOEM企業トップ10のうち6社を代表する重役の方々、また一次サプライヤー上位10社の面々と席を交え、VRの次の段階とそれが自動車の将来に与える影響について議論しました。Davidが触れたのは以下の点です。

VRが次にもたらすものは何か。

  • 今後12か月から18か月で、VRデバイスとコンテンツは大きな飛躍を遂げるでしょう。企業が製造とデバイスの販売を強化するため、開発者は引き続きコンテンツを撮影するカメラの解像度とVRデバイスをコードレスで利用するためのオプションに重点を置くでしょう。
  • モバイル開発はPCに追いつくでしょう。現在、モバイルデバイスとラップトップには、完全に実体験のように感じるVRアプリケーションを実行する能力がありません。しかし、モバイルの処理速度は6か月ごとに倍増しており、ディスプレー能力が進化し、バッテリー寿命が延びれば、VRはますますモバイル上で実行可能になるでしょう。それまでは、PCベースのVRが主導するでしょう。
  • VRコンテンツは新しいホームを持つでしょう。現在は Facebook、Instagram、およびYouTubeといったソーシャルメディアが独占しているソーシャルインタラクションの中に、VRは没入型の環境を提供するでしょう。これはすでにVRビデオシェアで本格的に機能しています。しかし、GoProのような企業がカメラの品質を改善するテクノロジーに大きな投資しているので、まもなくVRコンテンツの保管に関しての競争が起きるでしょう。
  • そして近視眼的な反発。VRがモバイルデバイスやPC上で機能するようになったとしても、懐疑的な人はVRテクノロジーをゲーム業界でしか使えないツールとして見限るでしょう。しかし、革新的なリーダーはVRを多くの産業で使う方法を見つけるでしょう。「VRデバイスを身につけてみてください。そうすれば、貴社のお客様と関連する利用方法をただちにいくつか思い浮かべられるでしょう」とDavid氏はグループに語りかけました。モバイルで機能することにより、VRは魅力を増し、ゲーム分野を超えて利用可能となります。

自動車分野でのVRの利用法にはどのようなものがあるのでしょうか。

  • オンライン セールスサポート。完全な自動走行車が道路を走る前に、今後数年でもっとも明らかなVRの利用方法は販売ツールです。カメラの解像度が向上することにより、お客様はVRを通じてさまざまな車のドライブ体験をシミュレーションできるようになるでしょう。それら技術が、ディーラーや従来のオンラインメディアの代替として現在立ち上がりつつあるオンライン販売チャネルを支援することになります。
  • 研修ツールの改善。すでに拡張現実(AR)(音、ビデオ、グラフィックス、またはGPSデータといったコンピューターが作り出す感覚の入力により、現実に仮想世界を反映すること)は現実の状況をシミュレーションし、安全運転を教える運転教習のツールとして使用されています。まもなく、VRはこれらの機能でARにとって代わるか、あるいはそれを補うものとなるでしょう。そして、保険会社は初心者ドライバーに対してVRシミュレーションを使用する機会に飛びつくでしょう。VRは技術仕様書とユーザー機能トレーニングも代替していくでしょう。
  • 旅行需要の増加。人々はVRが旅行を減らすと考えがちですが、それは間違いです。よく、「ゴーグルを付けるだけでハリウッドやニューヨークを見ることができるなら、なぜ実際にそこに行く必要があるのでしょう?」などと言ったりしますが、まだVRでは社会的関係を持つことはできません。現在のところ、自分だけの体験なのです。ゴーグルを付けてグランドキャニオンを見ることはできるでしょうが、自分だけで見ることになります。VRにより人々は仮想的に見た場所に実際に行きたくなり、実際に行くことで他の人と一緒にその体験をすることができるのです。

VR は「見る」産業をすべて変革するでしょう。そうです。ゲームやビデオだけでなく、自動車や旅行も対象になるのです。デバイスがよりパワフルになり、VRが容易にアクセスできるようになるにつれ、コンテンツ制作と配信には不可欠なツールになります。革新的なVRを今日の製品に応用する者が、未来の産業を牽引することになるでしょう。